個人的に好きなアイデア発想法をまとめてみた
はじめに
事業開発を進める中で要となるのが事業アイデアの創出です。しかしながら、誰にどのような価値を届けるかを決めるのは簡単ではなく、意見をうまく発散・収束させ、価値のあるアイデアをつくる必要があります。
ということで、今回は私が事業開発に携わった際に実際に使って好印象だったアイデア発想法をまとめてみました。
タテマエメソッド&HMWQ
タテマエメソッド
タテマエメソッドはエンジニアのためのデザイン思考入門で言及されているフレームワークで、本音と建前に潜む矛盾をもとに新しい発見を得るための手法です。ターゲットとなる顧客や業界が決まっているとアイデアが出しやすいです。
[状況]にある[ユーザー]は、
[行動]をしている/する必要がある。
なぜなら[タテマエ]だからだ。
とはいえ、本当は[インサイト]である。
出所:エンジニアのためのデザイン思考入門, p.163
重要なポイントは「とはいえ」から始まる一文。
前3行だけだと当たり前のことを言っているだけになり、「そうだね」で終わってしまいます。そこで「とはいえ」の一文で、建前が実現できない現実的な事情や感情を示し、解決の糸口とするわけです。
例として、今書きながら思いついたことをタテマエメソッドで表現してみます。
日々の作業に追われながら働く若手SEは、
目先の作業だけでなく、1週間後、1か月後を見据えて作業計画を立てなければならない。
なぜなら、状況が変わりゆく中で最新の情報をもとに今後の作業計画を立てなければ、後々手戻りや準備不足によるロスが生じるからだ。
とはいえ、計画を立てるよりもその日の作業を確実に終わらせることの方が重要だ。
今後を見据えて将来の作業計画を立てることが重要とわかりつつも、目先の作業に没頭してしまうという矛盾を表現できました。ここで表現した矛盾を具体的な問題として定義します。
HMWQ
HMWQとは「どうすれば私たちは○×できそうか?(How Might We...?)」という問いのことです。タテマエメソッドで着目した矛盾について具体的な解決策を考える際に使用します。
ただ単に矛盾が解消された状態を文字にしても意味はありません。HMWQを考える際に以下のポイントを意識しながら問いを立てることで斬新かつ効果的な解決策につなげることができます。例えば、先に述べたタテマエメソッドをもとに「どうすれば私たちは、若手SEが将来の計画を立てられるようになるか?」と問いを立ててもあまりに安直で効果的な解決策につながりません。
- 良い面を伸ばす
- 悪い面を除去する
- 反対を考える
- 前提を疑う
- 形容詞で考える
- 他のリソースを活用する
- ニーズやコンテクストから連想する
- 課題に対して遊んでみる
- 現状を変更する
- 課題を分割する
例
- どうすれば私たちは、作業者と管理者を分担し、分業して効率よくプロジェクト推進できるか?(前提を疑う)
- どうすれば私たちは、若手SEをマネジメントするPMをアサインできるか?(他のリソースを活用する)
- どうすれば私たちは、若手SEが目先の作業を進める中で将来の作業を意識せざるを得ないようなインセンティブを設定できるか?(?)
上述の例が質の高い問いとは言えないかもしれませんが、元々の矛盾を違った観点で捉えなおすことができ、新しいアイデアにつながります。
アナロジー(類推)
アナロジーの定義は以下の通りです。
特定の事物に基づく情報を、他の特定の事物へ、それらの間の何らかの類似に基づいて適用する認知過程である。
類推 - Wikipedia
簡単に言うと、アナロジーとはアイデアを異なる領域から借りることです。事物を抽象化することで構造的な類似点を見出し、それを検討対象となる事物に当てはめる取り組みとも言えます。
例えば、漫画を軸に何らかのビジネスを始めたいと考えたとしましょう。漫画以外の全く異なる世界からアイデアを借りられないか考えながら、ふと目の前の不動産広告に目を落とします。当たり前ですが、アパートを借りると毎月一定の家賃を支払わなければなりません。当然、家にどれだけ居たかということは問われません。そこで思いつくのです。漫画を「買う」から「定額読み放題」にすればいいんじゃないかと。これは賃貸というビジネスモデルを漫画ビジネスに適用するというアナロジーです。
実際は、類推元となる何らかのプロダクト・サービスを抽象化し、検討対象となるプロダクト・サービスに類推できるかどうかを検討していきます。上述の例では賃貸のビジネスモデルを抽象化し、「一定額払えば使い放題」という構造を漫画ビジネスに当てはめました。
次に、世間的に話題になっている、または自分自身が興味のあるプロダクト・サービスについて、それがユーザーにもたらす価値の仕組み(背景や情緒)に着目してアイデアをつくる方法について説明します。 これは、なぜ「つい買ってしまう」のか?~「人を動かす隠れた心理」の見つけ方~で紹介されていたアイデア発想法を筆者が勝手にカスタマイズしたものです。
アイデアの転用元となるテーマが海外旅行、転用先として国内旅行とVRとなっています。転用という言葉を用いているのは、完全な類推ではないためです。他からアイデアを借りて全く異なる世界に適用するという点は類推と同じですけどね。
ここでは、人口の減少が続く日本でも海外旅行者数は増えている(要出展)という事実をベースに、それに近い国内旅行と、アイデアの実現手段として用いたいと考えているVRを取り上げています。海外旅行が人々にもたらす感情(情緒)とその背景、情緒をもたらすトリガーとなる事柄について整理し、転用先の国内旅行とVRでも同様に情報を整理してアイデアを導きます。
おわりに
年度末ということもあり、下期に得た知識や経験を整理するという意味で記事にしてみました。
他にもアイデア発想法はあると思うのでいいのがあったら教えてくださいー。