Matsu Blog

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交互作用と単純傾斜分析についてまとめてみた

はじめに

回帰分析シリーズ(?)第5弾です。

今回は、回帰分析で複数の説明変数の相乗効果を考慮するための方法について記事にまとめました。

過去記事

回帰分析における悩み

ある被説明変数に対して何が決定要因となっているかを明らかにする目的で重回帰分析を行ったとしましょう。

通常通りに分析結果の解釈を試みると、それぞれの説明変数の偏回帰係数について有意かどうかを判断します。

ここでよく気になるのが単一ではなく複数の説明変数の掛け合わせた結果が被説明変数に対して影響を及ぼしていないかということです。

例えば、何らかの病気の回復度を被説明変数とし複数の薬A. B. Cが説明変数として存在するものとします。このとき、薬A、薬Bそれぞれだけを服用しても意味はないが、薬Aと薬Bを同時に服用することで症状に対する効果があるかどうかを検証したいというケースもあるはずです。

このようなときに考慮すべき事項が交互作用です。

交互作用とは

統計WEBには以下のような説明があります。

交互作用は2つの因子が組み合わせることで初めて現れる相乗効果のことです。「肥料の量×土の種類」の場合、肥料の量と土の種類が相互に影響を及ぼし合っていることを表します。また、交互作用による効果のことを「交互作用効果」といいます。
出所:30-4. 交互作用とは | 統計学の時間 | 統計WEB, 太字は筆者による

交互作用が存在する場合、単一の説明変数では有意とならなかった場合でも、複数の説明変数で見ると有意になる場合があります。交互作用の検討を怠れば、本来知ることのできた新しい発見を見逃すことになりかねません。

では重回帰分析において交互作用をいかにして取り込めばいいのでしょうか。

交互作用の分析への取り込み

まずは交互作用を適切な説明変数として表現する必要があります。

対象となる説明変数を掛け合わせた値(x1 × x2)を説明変数として採用すればよさそうです。しかし、そうしてしまうと元の説明変数と新たに生み出した説明変数との相関係数が高くなってしまい、多重共線性が生じる可能性が高くなります。(多重共線性については過去記事参照)

このような事態を避けるため、交互作用項(x1 × x2)に対して中心化を行います。

中心化

中心化とは、各説明変数から当該説明変数の平均値を引く操作のことです。

たとえば、x1の平均値が3の場合、あるレコードのx1の値が1であれば1-3=-2, 4であれば4-3=1が中心化された値となります。

この操作を交互作用の検討対象となる説明変数(x1, x2)および交互作用項(x1 × x2)に対して行います。

交互作用項を含めた分析

あとは、中心化した説明変数(x1, x2)と中心化した交互作用項(x1 × x2)を使い、通常通りに重回帰分析を行います。

交互作用項が有意になっていれば、x1とx2の組合せが被説明変数に対して影響があった(=偏回帰係数が0ではなかった)と判断することができます

単純傾斜分析

交互作用の分析に関連する分析として単純傾斜分析というものがあります。

単純傾斜分析では、特定の説明変数がある傾向をもったときの被説明変数への有意性を分析します。

単純傾斜の検討対象をx1とすると、以下の2パターンで重回帰分析を行うことになります。なお、x1を中心化した値をx1_cと示すものとします。

  • x1_cからx1_cの標準偏差を引いた値(x1_c')と、その値を踏まえた交互作用項(x1_c' × x2_c)を使って同様に重回帰分析する
  • x1_cからx1_cの標準偏差を足した値(x1_c')と、その値を踏まえた交互作用項(x1_c' × x2_c)を使って同様に重回帰分析する

この分析では、標準偏差による操作を行った説明変数(x1)ではなく他方(x2)の説明変数について、被説明変数に対する偏回帰係数とその有意性を明らかにします。操作を行ったx1に着目した分析ではないので注意が必要です。

上記2パターンで重回帰分析を行うことで、x1がある傾向にある状態(1SD大きい/1SD小さい)において、x2の値が被説明変数に対していかなる影響を持つかを判断することができます。その判断についても通常通り偏回帰係数とその有意性で判断するため、上述のケースではx2の偏回帰係数とその有意性を見ることになります。

たとえば、+!SDでは有意となったが-1SDでは有意とならなかった場合、

x1が高い場合はx2によって被説明変数に影響をもたらすが、x1が低い場合はx2によって被説明変数に影響を及ぼしづらいと判断することができるのです。

具体的な考え方については以下の資料を参照してみてください。ブログのレベルじゃないくらいに詳しく書かれています。 tomsekiguchi.hatenablog.com 以下のp.30-1も非常に参考になりました。 http://cogpsy.educ.kyoto-u.ac.jp/personal/Kusumi/datasem17/lee1.pdf

おわりに

この記事を読んで交互作用や単純傾斜分析について少しでも理解が深まったのであれば幸いです。

参考資料

重回帰分析で交互作用効果 回帰分析による交互作用の検証 http://cogpsy.educ.kyoto-u.ac.jp/personal/Kusumi/datasem13/shinya2.pdf http://cogpsy.educ.kyoto-u.ac.jp/personal/Kusumi/datasem17/lee1.pdf http://harp.lib.hiroshima-u.ac.jp/hijiyama-u/file/4876/20140122095555/hjt4307.pdf