Matsu Blog

マーケティング、事業開発、統計学をテーマに何かしらを書き留めていきます

人材流動から考えるSIerの今後

はじめに

どうも、まつ(@wannko5296)です。

SIer×DXで何か記事を書きたいなーと思い、人材流動をテーマに記事を書いてみることにしました。

もっとも、当初は「"御社のDXを支援します!"と言ってるSIer、自社のDX全然進んでない説」という攻めたタイトルで書こうとしていたのですが、この領域を語ろうとしたら奥が深すぎて厳しかったので、今回かなり狭い範囲で書いてます。

IT人材の流動

雇用動向

全体概況ということでまずは人材の需給バランスを見てみましょう。

IT人材の需給バランスは年々変化しており、2018年時点で大幅な人材不足となっています。

経済産業省もしばしばレポートを出している通り、今後も人材不足は継続・拡大する見込みです。 f:id:wannko5296:20200207073707p:plain IT人材白書2019, IPA, p.19より

デジタル化と人材流動

IPAはDXと同じような意味で「デジタル化」という言葉を使っているため、この記事でもその言葉を以下の定義のもと使っていきます。

IoTやビッグデータ、AIなどといったデジタルテクノロジーを用いた、ビジネスプロセスの改善や新たな事業領域への進出、既存のビジネスモデルの転換

IT人材白書2019, IPA, p.9より

デジタル化に率先して取り組む企業では、企画・設計などの上流工程の内製化を進めているようです。

アフターデジタルの世界観と同様、今後は「ITなんて当たり前」の時代です。

アナログな業務・サービスの単なるデジタル化から、事業の各要素でデジタルを最大限活用するのが当然となるため、他社にアウトソースするのではなく自社の人材を中心に進む必要が高まっています。

f:id:wannko5296:20200216224248p:plain IT人材白書2019, IPA, p.14より

求められているデジタル人材の具体的な人材像を見てみましょう。

データ活用やビジネス企画・推進に関する人材であり、データ駆動でより高い付加価値を生み出せる人材が求められているということです。

まさにDXっていう感じですね。 f:id:wannko5296:20200128082743p:plain IT人材白書2019, IPA, p.16より

IT人材自体が不足する中で、ユーザー企業ではデータ活用やビジネス企画・推進に強いデジタル人材の確保を進めています。

図表は省略しますが、上述のようなデジタル人材の確保については以下のような事実が明らかになっています。

  • IT企業→IT企業への人材流動は変動はほぼないが、IT企業→ユーザー企業への人材流動は高まっている
  • 2013年と比べ、2018年の調査ではIT企業、ユーザー企業ともに中途採用に占めるIT人材の割合は高くなっている

企業のデジタル化にあたり、ユーザー企業が人材を外部から採用していることがうかがえます。売り手市場。

IT人材白書2019, IPA, p.8

想定シナリオ

人材不足、上流工程の内製化、ベンダーからユーザー企業への人材流動といういくつかの事実をもとに、今後SIerが待ち受けるシナリオを考えてみます。

シナリオ1:SIerは単なる開発お手伝い集団になる

今後はデジタル化すらも当たり前となり、上流工程は内製化が基本となります。

従来はSIerが要件定義や外部設計などの上流工程から参画していましたが、今後はユーザー企業だけで推進されることも考えられます。

そうなるとSIerは、局所的に人員が必要となる内部設計や開発でしか必要とされなくなり、単なる開発お手伝い集団となります。

SIerにとっては売上減少、裁量権は縮小するため、いろんな意味でおもしろくないシナリオですね。

シナリオ2:SIerは上流・特定技術のコンサルティング集団になる

外部から経験豊富な人材を採用し、内製化がある程度進んだとしても、特定領域におけるノウハウ不足は発生します。

例えば、世の中に多種多様なSaaS/PaaS/IaaS(クラウド含む)がある中で、どのサービスを組み合わせるのが最適かを判断するのは簡単ではありません。

具体的なサービスが決まってしまえばそのサービサーからコンサルタントを連れてくればよいですが、そのサービスを決めること自体が難しいわけです。

この点については、複数の業界業種の企業に対する構築経験のあるSIerが立場としては強いです。

技術選定や業務システム構築に関するアドバイスなど、上流領域にSIerが特化してコンサルティングサービスを展開する可能性もなくはないと思ってます。

シナリオ3:何も変わらない

進む人材不足。ユーザー企業は内製化の必要性を感じながらも、なかなか人材を確保できず、結局SIerに発注することになります。

使用する技術やトレンドは変われど、SIerへの需要自体は大きく変わらないことを予想するシナリオです。

SIerはどうすべきか?

シナリオを3つ書いておいてアレですが、3つ書くにはもう少し時間が欲しい()。

ということでひとまず1案だけ書いておきます。

SIerがとるべき戦略:コンサルティング企業へのシフト

シナリオ2で言っていることと同じですが、コンサルティング企業へのシフトSIerに求められていると考えてます。

「デジタル化と人材流動」でも記載の通り、今後(というか今もそう?)は「ITなんて当たり前」な時代となり、従来非IT人材とされていた事業や部門においてもデジタルテクノロジーの活用は必須となります。

このようなトレンドへのキャッチアップが早い企業では企業内部でどうにかなるかもしれませんが、多くの企業では事業のデジタル化に際し人もノウハウも足りないという問題が顕在化していくはずです。

具体的に「何を(what)」を作るかを決めてQCDを確保しながらモノを作れるSIerが、「なぜ(why)」、「どうやって(how)」というコンサルティング領域を担えば、ワンストップで事業改革を推進できることになり、ユーザー企業にとっては推進がかなりラクになるはずです。

残念ながら現状のSIerコンサルティングが強い企業はそう多くないので、それこそ中途採用でそういう人材を確保しなければならず、その点は課題ですね。

さいごに

全然まとめきれませんでしたが、今後もSIer×DXをテーマに記事を書いていこうと思うのでよろしくお願いします!

参考資料

memo